歯の詰め物、被せ物がとれてしまったら…
歯の詰め物や被せ物(クラウン、インレー、アンレーなど)が取れてしまうことは、虫歯治療や修復治療を受けた人にとって経験あるかもしれません。
実は歯医者に通うきっかけの5人に一人はこちらと似た症状となります。
特にお子さんの場合、詰め物が外れると歯磨きなどの時に歯が染みる事も多く、日頃のケアもおろそかになりがちです。
状況の理解から対処法、予防までを網羅し、歯の詰め物、被せ物がとれてしまっ時の処置方法などをお伝えしていきます。
歯の詰め物とは?

歯の詰め物
歯の詰め物は、歯の修復治療に使用される「詰め物」の一種で、虫歯や歯の損傷を治療した後に、歯の機能を回復し、保護するために使用されます。
特に子供の場合、乳歯や永久歯の虫歯治療で使用されることがあり、歯の形状や噛む力を取り戻す役割を果たします。
インレーとアンレーの定義、特徴、役割、子供での使用についてわかりやすく説明します。

インレーとは?
インレーは、歯の咬合面(噛む面)の中央部分に詰める修復物。歯の「窪み」や「溝」のみをカバーし、歯の突起(咬頭:歯の尖った部分)にはかからない。
・特徴
虫歯が比較的小さく、歯の中心部(溝や窪み)に限定されている場合に使用。
通常、奥歯(臼歯)の治療に適している。
素材: 金属(金、銀合金)、セラミック、コンポジットレジン(樹脂)など。子供では耐久性や審美性を考慮し、セラミックやレジンが選ばれることも。
・メリット
歯を削る量が少なく、元の歯を多く残せる。
精密に作られるため、噛み合わせや適合性が高い。
耐久性があり、長期間使用可能(素材による)。
・デメリット
製作に時間がかかる(即日修復できない)。
費用が直接詰めるレジンより高い場合がある。

アンレーとは?
アンレーは、歯の咬合面に加えて、歯の突起(咬頭)の一部または全体をカバーする修復物です。
インレーよりも広範囲を修復することができます。
・特徴
虫歯や損傷が咬頭を含む広い範囲に及ぶ場合に使用。
歯の構造を強化し、噛む力に耐えられるようにする。
素材はインレーと同じ(金属、セラミック、コンポジットレジン)。
・メリット
広い範囲の欠損を修復でき、歯の強度を回復。
クラウン(被せ物)に比べ、歯を削る量が少ない。
審美性の高い素材(セラミック)を選べば、自然な見た目。
・デメリット
インレーより製作コストや時間がかかる場合がある。
非常に大きな欠損には不向き(クラウンが必要)。

歯の被せ物(クラウン)とは?
被せ物(クラウン)は、歯の修復治療において、歯の全体または大部分を覆う形で装着される人工の修復物です。
虫歯や外傷などで歯が大きく損傷した場合や、歯の形や機能を回復するために使用されます。
子供の場合、乳歯や永久歯の治療で被せ物が使われることがあり、特に乳歯の重度の虫歯や永久歯の保護に役立ちます。
クラウンの特徴
虫歯や破折で歯の大部分が失われた場合や、歯の構造が弱っている場合に使用。
インレーやアンレー(詰め物)よりも広範囲をカバーし、歯全体を補強。
通常、歯科技工士が歯の型をもとに製作し、歯科医がセメントや接着剤で装着。
クラウンの目的
歯の機能を回復(噛む力や咀嚼能力の維持)。
歯の形や見た目を整える(審美性の向上)。
弱った歯を保護し、さらなる損傷を防ぐ。
歯の神経治療(根管治療)後の歯を補強。
被せ物の種類被せ物は素材や用途によってさまざまな種類があり、用途や審美性、耐久性に応じて選ばれます。以下は主な種類です。
金属クラウン
素材 |
金合金、銀合金、ニッケルクロムなど。 |
---|---|
特徴 |
非常に耐久性が高く、奥歯に適している。噛む力が強い部位でも壊れにくい。 |
メリット |
長持ち(10~20年以上)、費用が比較的安い。 |
デメリット |
金属色のため審美性が低く、前歯には不向き。 |
子供での使用/乳歯や永久歯の奥歯でよく使用(特にステンレススチールクラウン)。
セラミッククラウン
素材 |
ジルコニア、ポーセレン(陶材)など。 |
---|---|
特徴 |
自然な歯の色に近く、審美性が高い。前歯や見える部位に適している。 |
メリット |
見た目が美しく、金属アレルギーの心配がない。 |
デメリット |
金属よりやや壊れやすい、費用が高い。 |
子供での使用/永久歯の前歯や審美性を重視する場合に使用。
コンポジットレジンクラウンン
素材 |
樹脂ベースの素材。 |
---|---|
特徴 |
比較的安価で、即日修復が可能な場合も。審美性はセラミックより劣る。 |
メリット |
短期間で治療可能、費用が抑えられる。 |
デメリット |
耐久性が低く、変色や摩耗しやすい。 |
子供での使用/乳歯や一時的な修復に使用。
詰め物・被せ物が取れる原因

歯の詰め物(インレー、アンレー)や被せ物(クラウン)が取れてしまうことは、詰め物をされた方の多くが経験した事があると思います。
特に子供の場合、乳歯や永久歯の詰め物・被せ物が外れる原因は、大人と共通する点もあれば、子供特有の要因もあります。
歯の詰め物や被せ物が取れる主な原因を、わかりやすく詳細に説明します。

接着剤の劣化や経年変化
詰め物や被せ物を歯に固定するために使用されるセメントや接着剤は、時間とともに劣化していきます。
・具体例
接着剤の摩耗/唾液、温度変化(熱い・冷たい食べ物)、噛む力により、接着剤が弱る。
経年劣化/詰め物や被せ物を装着してから数年~十数年経つと、接着力が低下する(例: 金属インレーは5~10年、セラミックは素材により異なる)。
装着時に接着剤の量や硬化が不十分だった場合、早期に外れる。
子供での特徴
乳歯の詰め物(例: ステンレススチールクラウン)は、乳歯が抜けるまでの短期間(数年)を想定しているため、接着剤が簡易な場合がある。
永久歯の詰め物・被せ物は、成長に伴う噛み合わせの変化で接着が弱ることがある。
影響/接着剤が弱ると、詰め物や被せ物がグラつき、食事や噛む力で外れる。

虫歯の再発や歯の損傷
詰め物や被せ物の下や周囲で新たな虫歯(二次う蝕)が発生したり、歯自体が損傷すると、修復物が外れやすくなる。
・具体例
二次う蝕/詰め物・被せ物の隙間から細菌が入り、歯が再び虫歯になる。虫歯が進行すると、修復物を支える歯の構造が弱り、外れる。
歯の破折/詰め物や被せ物を支える歯が欠けたり、ひび割れたりする(例: 硬い物を噛んだ、事故による衝撃)。
歯の摩耗/歯ぎしりや強い噛み合わせで、歯や修復物の周囲が削れる。
子供での特徴
乳歯はエナメル質が薄く、虫歯が進行しやすい。詰め物の下で虫歯が再発すると、外れやすい。
永久歯が生えたばかりの子供(6~12歳)は、歯が未成熟で弱いため、損傷リスクが高い。
甘いお菓子やジュースの頻繁な摂取が虫歯再発を促す。
影響/虫歯や損傷により、修復物と歯の適合性が悪くなり、接着が剥がれる。
噛み合わせの変化や外傷
噛み合わせのズレや外部からの強い力が、詰め物・被せ物に過剰な負担をかけ、外れる原因となる。
具体例/噛み合わせの変化/歯並びの変化、顎の成長、歯ぎしり、食いしばりにより、修復物に不均衡な力がかかる。
外傷/転倒、スポーツ中の衝撃、硬い物(例: 氷、ナッツ、キャンディ)を噛むことで、修復物が外れる。
不適切な噛み方/修復物がある歯で硬い物を頻繁に噛む。
子供での特徴
混合歯列期(6~12歳)は、乳歯と永久歯が混在し、噛み合わせが不安定になりやすい。
子供は活動的で、転んだりすることにより歯を損傷する事があります。
詰め物・被せ物が取れた時の対象方法
歯の詰め物(インレー、アンレー)や被せ物(クラウン)が取れてしまった場合、迅速かつ適切な対応が重要です。
特に子供の場合、乳歯や永久歯の状態によっては、放置すると虫歯の進行や歯の損傷が悪化するリスクがあります。
詰め物や被せ物が取れたときの対処法を、家庭での対応から歯科医への相談、子供特有の注意点まで、わかりやすく詳細に説明します。
状況を落ち着いて管理し、歯の健康を守る手助けになります。
すぐにやるべきこと(詰め物・被せ物の保管)
・取れた詰め物・被せ物を確認
詰め物や被せ物が取れたことを確認したら、飲み込まないように注意。
子供の場合は特に、誤って飲み込むリスクがあるため、すぐに吐き出させる。
取れた修復物が欠けたり壊れていないかチェック(破損していなければ再装着可能な場合も)。
・保管方法
修復物を清潔な容器(例: 小さなジップロックやプラスチックケース)に入れる。
水や生理食塩水(なければ唾液)に浸して乾燥を防ぐ。乾燥すると再装着が難しくなる。
注意/修復物を洗う場合は、軽く水で流す程度に。洗剤や熱湯は使用しない。
・子供が詰め物をなくしてしまった場合
子供に「飲み込まなかったか」「どこに落ちたか」を落ち着いて聞く。
修復物が見つからない場合飲み込んでしまった可能性もあるので、小児科医や歯科医に相談。必要に応じてX線で確認をとらせていただきます。

歯科医への連絡と予約のタイミング
詰め物や被せ物が取れたら、できるだけ早く(理想的には24~48時間以内)かかりつけの歯科医に連絡。
状況を説明(例: 「子供の乳歯のクラウンが取れた」「永久歯のインレーが外れてしみる」)し、緊急性の確認を。
取れたままの状態ですと、細菌が歯の隙間に入りやすくなり、虫歯など悪化してしまう事もあります。
・予約のタイミング
緊急性が高い場合(以下の症状がある場合):
強い痛み、歯茎の腫れ、発熱、膿。
歯が欠けたり、ぐらついている。
・緊急性が低い場合(例: 痛みや腫れがない、歯が安定)
数日以内に受診(遅くても1週間以内)。
放置すると虫歯や損傷が進行するリスクがある。
・子供での注意
子供は痛みを我慢したり、 しみる、食べ物が詰まるといったことをうまくつたえられません。観察し不安な場合、早めにご相談ください。
乳歯の修復物が取れた場合でも、永久歯の萌出や歯並びに影響する可能性があるため、放置してはいけません。
・連絡時の準備
取れた修復物の種類(例: インレー、クラウン、素材)、取れた時期、症状(痛み、しみる、腫れ)を伝える。
子供の年齢や乳歯・永久歯の区別を明確に。
・目的/迅速な受診で、歯の損傷や感染を防ぎ、適切な治療を受ける。
・応急処置(家庭でできること)
口腔内の清潔を保つ
取れた部分に食べかすが詰まると虫歯や感染のリスクが高まる。軽くうがい(水または塩水)で洗浄。
子供には、優しくうがいをさせ、食べ物が詰まっていないか確認。
注意: 歯ブラシで強くこすったり、尖った物(爪楊枝など)で触らない。歯や歯茎を傷つけるリスク。
・痛みやしみる感覚への対処
歯の被せ物が取れた時の歯科医での治療
歯の詰め物(インレー、アンレー)や被せ物(クラウン)が取れてしまった場合、迅速かつ適切な対応が重要です。
特に子供の場合、乳歯や永久歯の状態によっては、放置すると虫歯の進行や歯の損傷が悪化するリスクがあります。
詰め物や被せ物が取れたときの対処法を、家庭での対応から歯科医への相談、子供特有の注意点まで、わかりやすく詳細に説明します。
状況を落ち着いて管理し、歯の健康を守る手助けになります。
すぐにやるべきこと(詰め物・被せ物の保管)
・取れた詰め物・被せ物を確認
詰め物や被せ物が取れたことを確認したら、飲み込まないように注意。
子供の場合は特に、誤って飲み込むリスクがあるため、すぐに吐き出させる。
取れた修復物が欠けたり壊れていないかチェック(破損していなければ再装着可能な場合も)。
・保管方法
修復物を清潔な容器(例: 小さなジップロックやプラスチックケース)に入れる。
水や生理食塩水(なければ唾液)に浸して乾燥を防ぐ。乾燥すると再装着が難しくなる。
注意/修復物を洗う場合は、軽く水で流す程度に。洗剤や熱湯は使用しない。
・子供が詰め物をなくしてしまった場合
子供に「飲み込まなかったか」「どこに落ちたか」を落ち着いて聞く。
修復物が見つからない場合(例: 飲み込んだ可能性)は、すぐに小児科医や歯科医に相談。X線で確認が必要な場合も。

歯の被せ物が取れた時の歯科医での治療
歯の詰め物(インレー、アンレー)や被せ物(クラウン)が取れた場合、歯科医での治療は、歯の状態を評価し、修復物を再装着するか、新しいものを作成するかを決定するプロセスです。
特に子供の場合、乳歯や永久歯の状態、成長段階、口腔内の環境に応じて治療が異なります。
詰め物や被せ物が取れた 際の歯科医での治療プロセスを、診断から治療、子供特有の考慮点まで、わかりやすく詳細に説明します。
受診時の流れや期待される対応を理解しやすくなります。
歯開院での治療の流れ
歯の診断(歯の状態チェック、レントゲン |
取れた原因と歯の現状を評価し、適切な治療計画を立てる。 |
---|---|
問診 |
歯科医は、いつ取れたか、症状(痛み、しみる、腫れ)、取れた修復物の種類(例: クラウン、インレー)、子供の年齢や口腔習慣を聞く。 |
視診 |
取れた歯の状態をチェック(虫歯の再発、歯の欠け、歯茎の炎症、ぐらつき)。 |
レントゲン検査(必要に応じて) |
歯の内部(例: 虫歯の進行、歯根の状態、神経の炎症)を確認。 |
その他の検査 |
噛み合わせのチェック(取れた原因が噛み合わせのズレか確認)。 |
子供での特徴 |
乳歯の場合、抜歯の時期が近いか、永久歯の準備状況を確認。 |
その他の検査 |
噛み合わせのチェック(取れた原因が噛み合わせのズレか確認)。 |
診断結果 |
修復物の再装着が可能か、新たな修復物が必要か。 |
予防とケアのポイント

歯の詰め物(インレー、アンレー)や被せ物(クラウン)が取れるのを防ぐためには、日常的なケアと予防習慣が重要です。
特に子供の場合、乳歯や生えたばかりの永久歯はデリケートで、口腔習慣や食生活が修復物の寿命に大きく影響します。
詰め物や被せ物を長持ちさせ、取れるリスクを最小限に抑えるための予防とケアのポイントを、子供特有の考慮点も含めてわかりやすく説明します。
これにより、歯の健康を維持し、修復物の再治療を避ける手助けになります。
定期的な歯科検診の重要性
詰め物や被せ物の状態をチェックし、早期に問題(例: 虫歯の再発、接着の緩み)を発見・対処する。
推奨頻度 |
6ヶ月~1年に1回(子供は生え変わり期に特に重要)。 |
---|---|
検診の内容 |
詰め物・被せ物の適合性や隙間のチェック(虫歯や緩みを確認)。 |
子供でのポイント |
乳歯のステンレススチールクラウン(SSC)は、永久歯の萌出に合わせて交換や調整が必要な場合がある。 |
メリット |
修復物の小さな問題を早期発見し、取れる前に修復。 |
6.よくある質問
歯の被せ物はどのくらい持ちますか?
歯の被せ物(クラウン)の寿命は、素材、口腔内の環境、ケアの質、噛み合わせの状態、患者の生活習慣など多くの要因に依存します。
平均すると5年前後と言われております。
特に子供の場合、乳歯や永久歯の被せ物は、成長段階や口腔習慣によって寿命が異なることがあります。
被せ物が万が一取れてしまったら至急、歯科医院に行くことをおすすめいたします。
治療が終わった後、痛みを感じるのですが…
被せ物の装着後に痛みを感じる場合、通常は数日から1週間程度で落ち着くことが多いです。
しかし、1ヶ月以上経っても痛みが続く場合は、歯科医院に相談することをおすすめします
痛みが続く原因としては、被せ物の高さが合っていないことや、神経への刺激などが考えられます。
歯の神経を残したまま被せ物を付けるとどうなる?
歯の神経(歯髄)を残したまま被せ物(クラウン)を付けることは、虫歯や歯の損傷が神経に達していない場合によく行われる治療法です。
歯の自然な感覚や強さを保つために理想的ですが、特定のリスクや影響も伴います。
特に子供の場合、乳歯や生えたばかりの永久歯は神経が敏感で、治療後の反応が大人と異なることがあります。